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お笑い考察部①「芝居力」

お笑い作家のさわはらです。たくさんの芸人さんを見てきました。
今は月に、延べ300本ぐらいのネタのダメ出しをしています。
お笑いを志す人の為に知っていてほしい基本的な事を、十数項目にわけて書いていこうと思います。

まずは「芝居」の大切さ。
なんだそんな事か・・とタカをくくった人ほど最後まで読んでほしい。
面白い人、売れてる人の9割は芝居が上手い。この事実。

お笑いには、漫才やコント、喜劇や落語、モノマネなどなど色々あります。
芸人さんはネタを一生懸命考えますが、ネタと同じぐらい大事なものが「芝居」です。
私はネタ50点、演出50点で100点になると考えてます。
この演出の中でとりわけ大事なのが芝居です。
コントや落語などでは芝居が大切というのはわかると思います。なかでも漫才は一番難しい芝居だと思っています。

・今ここで思いついたように話し
・はじめて聞いたようにリアクションをする
・気づかなかったようにアホな顔をして
・知らないふりをして間違える
・そしてそれをキャラクターを演じずに自分の素だとお客さんに思わせる

こんな芝居が漫才には必要です。

「初見」(はじめて見聞きした事)が大事と聞いたことがある人もいるでしょう。ネタを練習すればするほど、この最初の新鮮なリアクションや、自然な間がなくなっていきます。
ベテランになると、新鮮さがなくなるので練習をしすぎないようにしているコンビもあるぐらいです。若手の人が真似をしたりしますが、ただ下手なままになるので、練習はちゃんとしたほうがいいでしょう。

個人的にトレンディエンジェルのたかしさんの初見の芝居は素晴らしいと思います。何千回と見てきたハゲネタでも、今見たような新鮮な顔でリアクションします。

「初見」はわかっていても、なかなか出来ない。
役者の方やアイドルが真似事で漫才をするのを見たことがあると思いますが、いかにも練習した「初見」の芝居をするのを見たことないですか?台本が良くても、一気に冷めてしまう。
芝居というのは結局はウソの感情です。それをお客様に信じてもらわないといけません。
練習をしたように見せないのが本当の芝居です。

芝居で大切なのは「初見」だけでなく「とぼけ」と「感情表現」。
間違えたのに「え、間違えてる?」ととぼけた顔をする。
突っ込まれてるのに「理解してない」とすっとぼける。
この「とぼけ」がないと、多くの笑いが存在しなくなってしまいます。さらにいうと、「とぼけ」があるからボケにボケを重ねて、笑いどころを増やすことができる。
「とぼけ」は天性に頼る部分がありますが、身なりや性格、年齢にも関係してきます。
わかりやすい「とぼけ」では「ウソ」と見抜かれてしまします。ウソだと思われると冷めます。見る気が失せます。リアリティがなくなります。
本気で間違えているように見えたら、芸になります。

そして「感情表現」
漫才やコントは、短い時間の中でジェットコースターのように感情が上下します。
自然な会話ではありえないぐらい、怒ったり、困ったりします。
そんな姿を見て、お客さんは同情したり共感して笑います。
笑いは「ボケ」た部分だけで笑いを取るのではなく、その「人間性」や「感情」を受け取って笑ったりしています。
ですので、感情表現という芝居はものすごく大事です。
この部分をないがしろにしている若手の芸人さんが多いです。
「怒る」をひとつとっても、
怒る、叱る、キレる、イライラする、激怒、憤怒、怒りすぎて呆れる、憤怒、言葉にならないほど怒る、静かに怒りをためる・・・といくらでもあります。
その怒りを、言葉で表現するのか、態度で表現するのか、八つ当たりするタイプなのか、それとも押し殺すタイプなのか、人それぞれ違います。
何百通りもあるはずの「怒る」が、みんな一緒のはずがないです。それが芝居。そこがオリジナリティにもなります。

自分がどう感じているかを、表現するのが芝居です。
「怒りを感じてそれを演じている」つもりでも、お客さんに伝わっていないことは多々あります。本当にその芝居でいいのか、もう一度考えてほしい。他の表現の仕方はないのか?普通ならもっと声を荒げるだろうか?落ち着きがなくなって、イライラする態度を足してみようか・・
自分の気持ちを、お客様に受け取ってもらってはじめて演技になります。

バイキングさんのようなストレートな怒り、東京03さんのような気まずさの笑い、おぎやはぎさんのような怒りではなく許容やたしなめのような感情。色々な感情を表現できると笑いの幅が広がり、それがっそのコンビの特徴になったりします。

最後に芝居と言っても、「そんな気持ちで話す」だけではありません。
細かく言えば、以下の事は全部芝居です。
・表情で芝居をする
・声の大きさで感情を表す
・声質を変えて芝居をする
・声の高さ低さ(トーン)で気持ちを表現する
・セリフのスピードで感情を表す
・態度で芝居する
・動きで芝居をする
・目の動き、目線で芝居をする
・間のつめ方で気持ちを表現する
・相手との距離感で芝居する
等々
色々ありますね。

台本が良いはずなのにどうしてもお客様に伝わらないのは、芝居の何かがかけているのかも知れません。
セリフは怒っていても、声質が怒っていない
声は喜んでいても、目が笑っていない
正しい説明をしているのに目が泳いでいる
呆れた表情をしていても、間がそうなっていない
落ち着いた演技のはずなのに、体重移動が多い

声優さんに台本を読んでもらう機会がありますが、声優さんは声の演技に特化しています。いつも心から感心します。
声だけで「今は怒っているけど、冷静に対処している」みたいな細かな表現をします。それを芸人さんができるようになったら、強いですね。

余談ですが、声優の関智一さんにコント台本を読んでもらった時に、下読みなしの一発で見事にこちらが望んでいる演技をしてくれました。見事でした。一級の人は、他のことをしても一級品なんだなと感じました。
声優さんがどうやって声だけで演技をしているか、学ぶのも手だと思います。もちろん上手な人ですよ。
作った芝居がバレバレの、なんちゃって声優さんも多いですから

芝居が下手で必然性がなくウソっぽいと、お客さんものってきません。
ネタも大切ですが、芝居にも力をいれていきましょう。